県立霞城学園高等学校いじめ防止基本方針

1 はじめに

  •  いじめは、全ての生徒に関係する問題である。いじめの防止等の対策は、全ての生徒が安心して学校生活を送り、様々な活動に取り組むことができるよう、学校の内外を問わず、いじめが行われなくなるようにすることを目的として行われなければならない。
     また、全ての生徒がいじめを行わず、いじめを認識しながら放置することがないよう、いじめの防止等の対策は、いじめが、いじめられた生徒の心身に深刻な影響を及ぼす許されない行為であることについて、生徒が十分に理解できるようにすることを目的としなければならない。
     加えて、いじめの防止等の対策は、本校の他、教育委員会、地域住民、家庭、その他の機関及び関係者の連携の下、いじめの問題を克服することを目指して行われなければならない。
     なお、ここでの「いじめ」とは、生徒に対して、一定の人的関係にある他の生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった生徒が心身の苦痛を感じているものをいう。

2 いじめ防止のための取組み

【いじめ問題に対する教職員の基本認識】
  • 「いじめは絶対に許されない」、「いじめは卑怯な行為である」、「いじめはどの児童生徒にも、どの学校にも起こりうる」との共通認識を持つ。
  • 「いじめの定義」、「いじめの態様」について共通認識をしっかりしておく。
  • 担任等が一人で抱え込まず、「組織的に全職員」でいじめ防止に対応する。
  • 学校側のいじめに対する取組みについて、保護者と情報を共有し相互理解を図りながら進める。
  1. (1) いじめ防止等のための対策の組織と具体的な取組み
  2. ① いじめの防止等に関する措置を実効的に行うため、下記関係者からなる「いじめ防止対策委員会」を各課程に置く。

    ア 校内職員:校長、副校長、教頭、教務主任、生徒指導主事(事務局)、部主任、学科主任、保健主事、養護教諭、その他必要に応じて出席を求められた職員

    イ 校外関係者:PTA代表、通友会代表、学校評議員、学校精神科医、スクールカウンセラー

    ② 当該組織は、学校が組織的にいじめの問題に取り組むに当たって中核となる役割を担い、下記の具体的取組みを行う。

    ア 学校基本方針に基づく取組の実施や具体的な年間計画の作成・実行・検証・修正等を行う。

    ⅰ いじめを正しく理解し対応するための校内研修や職員会議等の情報提供の機会を設定する。

    ⅱ 学校の教育活動全体を通じ、生徒が活躍でき、他者の役に立っていると感じることのできる機会を全ての生徒に提供し、生徒の自己有用感が高められるようにする。

    イ いじめの相談・通報の窓口として対応する。

    ウ いじめの疑いに関する情報や生徒の問題行動等に係る情報を収集記録し、また組織内でその情報を共有する。

    エ いじめの疑いに係る情報があった時には緊急会議を開き、いじめの情報の迅速な共有、関係生徒への事実関係の聴取、指導や支援の体制・対応方針の決定と保護者との連携等の対応を組織的に行う。

  3. (2) 教職員による指導について
  4. ① いじめの態様や特質、原因・背景、具体的な指導上の留意点などについて、校内研修や職員会議で周知を図り、平素から教職員全員の共通理解を図っていく。

    ② 部集会やホームルーム活動、部活動などで校長や教職員が、生徒に対して、日常的にいじめの問題について触れ、「いじめは人間として絶対に許されない」との雰囲気を学校全体に醸成していく。

    ③ 生徒会活動等を利用しながら、常日頃から、生徒と教職員がいじめとは何かについて認識を共有する手段を講ずる。(何がいじめなのかを具体的に列挙して目につく場所に掲示する、学校だより(霞城学園通信(定時制)、霞城通信(通信制)、生徒会だよりに掲載する等)

    ④ いじめの加害の背景には、勉強や人間関係等のストレスが関わっていることを踏まえ、授業・面接指導についていけない焦りや劣等感などが過度のストレスとならないよう一人一人を大切にした分かりやすい授業・面接指導づくりを進める。同時に、ホームルームや部、部活動等の人間関係を把握して、一人一人自分の居場所や仲間との絆を感じ取ることができるような教育活動を推進する。

    ⑤ 教職員の言動が生徒を傷つけたり、他の生徒によるいじめを助長したりすることのないよう、指導の在り方に細心の注意を払う。

  5. (3) 生徒の主体的な取組み
  6. ① 生徒会によるいじめ撲滅の宣言等、生徒がいじめの問題について主体的に考え、いじめの防止を訴えるような取組みを推進する。

    ② 「いじめは人間として許されない行為である」「いじめを見て見ぬふりをすることもいじめを助長することにつながる」等、生徒へのいじめに対する理解を進めるとともに、いじめの防止等に資する生徒の自主的な企画及び運営による活動を促進することをはたらきかける。

    ③ 教職員は、全ての生徒が主体的に参加できる活動になっているかをチェックするとともに、教職員は陰で支える役割に徹するよう心がける。

  7. (4) 家庭・地域との連携
  8. ① 社会全体で生徒を見守り、健やかな成長を促すため、学校と地域、家庭と連携し、いじめ防止に係る取組みを推進する。

    ② 学校のホームページや、PTA総会、通友会総会、学校だより等を通じて「学校いじめ防止基本方針」について理解を得る。

3 未然防止のための取組み

  1. (1) 未然防止の必要性
  2.  国立教育政策研究所の調査によれば、小学校4年生から中学校3年生までの6年間で、9割程度の児童生徒がいじめに巻き込まれているとしている。この調査結果を前提に考えれば、全ての生徒がいじめに巻き込まれる可能性あると考え、全員を対象に事前の働きかけ、すなわち未然防止の取組を行うことが合理的と言える。

  3. (2) わかりやすく規律ある授業の実践
  4.  未然防止の基本は、全ての生徒が安心・安全に学校生活を送ることができ、規律正しい態度で授業や行事に主体的に参加できる学校づくりを進めることである。学校は勉強することがその中心であることから、未然防止の第一は、全ての生徒が授業に参加できる、授業場面で活躍できる授業を行うことであろう。それにより、学力向上はもちろん、いじめを始めとした生徒指導上の諸問題も未然に防ぐことができる。そのためには、授業改善のために毎年研究授業を行い「わかる授業」「生徒が活躍する授業」の研究改善に努める必要がある。また、未然防止のためには、生徒自身の授業態度も大切なことから、お互いに授業を参観することで、規律ある授業の在り方も研究する必要がある。

  5. (3) 「絆づくり」と「居場所づくり」
  6.  安全・安心な学校生活を送るためには、「絆づくり」と「居場所づくり」がキーワードになると言われている。「絆づくり」とは、主体的に取り組む共同的な活動を通して、生徒自らが「絆」を感じ取り、紡いでいくことを指す。また、「居場所づくり」とは、生徒が安心できる、自己存在感や充実感を感じられる場所づくりを指す。「絆づくり」を進めるのは生徒自身であり、「場所づくり」は教員が主体となって進めるものである。学級や学校をどの生徒にも落ち着ける場所にしていくことが「居場所づくり」と言えるが、それを行えば自然に生徒の間に「絆」が生まれたり、「社会性」が育まれたりするわけではない。全ての生徒が活躍できる場面を、組織的・計画的に準備することが必要である。そのために、「絆づくり」に必要な他者と関わる機会を学校生活のあらゆる場面において工夫していくとともに、学校行事等もそれを意識した計画にする必要がある。

  7. (4) 本校生徒の特徴
  8.  本校の生徒は、集団での生活に慣れていない生徒が多く、相手の立場をおもんばかった行動や会話を苦手とする傾向が強い。そのため、お互いにストレスをためやすくトラブルになることも多い。このような本校生徒の特徴から考えれば、「居場所づくり」と「絆づくり」を行うことが、いじめ防止対策には非常に重要なことになる。また、本校生徒は小中学校時代に活躍する場面が少なかった生徒も多いことから、人の役に立った、人から感謝された、人から認められた、という「自己有用感」を持たせることもいじめの未然防止に役立つと考えられる。

  9. (5) 生徒に培う力とその取組み
  10. ① いじめの防止に向けて、生徒には以下のような力を培う。

    ア 他人の気持ちを共感的に理解できる豊かな情操

    イ 自分の存在と他人の存在を等しく認め、お互いの人格を尊重する態度

    ウ 自他の意見の相違があっても、互いを認め合いながら建設的に調整し、解決していける力や、生徒が円滑に他者とコミュニケーションを図る能力

    エ ストレスを感じた場合でも、それを他人にぶつけず、運動・スポーツや読書などで発散したり、誰かに相談したりするなど、ストレスに適切に対処できる力

    オ 自己有用感、自己肯定感

    ② 上記のような力を総合的に培うために、以下のような取組みを行う。

    ア 学校の教育活動全体を通じた道徳教育や人権教育の充実、読書活動・体験活動などの推進

    イ 規律正しい態度で授業・面接指導や行事に主体的に参加・活躍できるような授業・面接指導づくりや集団づくり

    ウ 一人一人が活躍でき、他者の役に立っていると感じ取ることのできる機会や困難な状況を乗り越えるような体験の機会の提供

    エ ボランティア活動や社会貢献活動等の推進

4 早期発見の在り方

  1. (1) 「いじめ」を見逃さず、気づく努力と工夫
  2. ① いじめは、目に付きにくい時間や場所で行われたり、インターネット上で行われたりするなど、大人が気づきにくい形で行われることを認識する。
     いじめに遭っている生徒の発するサインが例え小さくても、いじめではないかとの疑いを持って声をかけ、積極的に確認していく。また、早い段階から複数の教職員で的確に関わり、いじめと疑われる行為を見て見ぬふりをしたり、軽視したりすることは絶対にあってはならない。

    ② いじめに遭った生徒が分かった場合、その生徒の話をよく聴く。いじめられている側の生徒は、加害側の生徒との人間関係により、いじめられていることを否定することもあるため、加害生徒とのこれまでの人間関係を洗い出し、被害生徒の心情に寄り添って傾聴していく。

    ③ いじめには遊びやふざけあいを装って、言葉による攻撃や軽くたたいたり蹴ったりなどの暴言・暴力等を伴って行われる比較的「目に見えやすいいじめ」がある。こういった「目に見えるいじめ」、もしくは「いじめの芽」と思われる行為を発見した場合、その場でその行為をやめさせるとともに、双方からの事情を聴き、繰り返しの行為がないか観察する。

  3. (2) 早期発見のための具体的な取組みの推進
  4. ① 日頃からの生徒との信頼関係の構築に努め、生徒が示す小さな変化や危険信号を見逃さないようアンテナを高く保つとともに、教職員相互が積極的に生徒の情報交換、情報共有を行い、校内教職員の「いじめ情報ネットワーク」の強化をはかり、いじめを積極的に認知するよう努める。

    ② 子どもが相談しやすい環境づくりのために、以下のような取組みを推進する。

    ア 学期に1度(通信制は年に2回)、「いじめ実態調査アンケート」を実施し、生徒の声に出せない声を積極的に拾い上げる機会を設定する。その際、生徒が周りの生徒の様子を気にせずに記入できるよう、質問内容や回収方法を工夫したり、無記名式アンケートを実施したりする配慮を欠かさないようにする。また、アンケート調査により短期的ないじめに関するホームルーム内の実態や推移を把握した上で、個別面談等により事実関係をさらに詳しく聴き取っていくなど、工夫して実施する。

    イ 生徒が日頃からいじめを訴えやすいホームルーム経営や「スクールカウンセラー」による教育相談、「希望のつばさ」による教育相談などを通して相談体制を整えると共に、二者面談や三者面談を活用し、生徒の悩みや交友関係を把握する。また、休み時間や放課後など、生徒の様子に目を配り、学級日誌など教職員と生徒の間で日常やりとりされているものも活用する。

    ウ 生徒及び保護者に、学校の相談窓口の他、県教育センターの24時間いじめ相談ダイヤル等について周知し、いつでも誰でも相談できる体制があることを知らせ、一人で悩まず声に出していくことが大切であることを理解させる。

    ③ より多くの大人が子供の悩みや相談を受け止めることができるようにするため、学校と家庭、地域が組織的に連携・協働する体制を構築する。その際、定期的に校内のいじめに関する状況等の情報を家庭や地域に知らせていくことに加え、保護者用チェックシートなどを活用し、家庭・地域と連携して生徒を見守っていく。

    ④ 生徒に対して多忙さやイライラした態度を見せ続けることは避ける。また、生徒の相談に対し、「大したことではない」「それはいじめではない」などと悩みを過小評価したり、相談を受けたにもかかわらず真摯に対応しなかったりすることは絶対にしない。また相談されたことは部主任、学科主任、生徒指導主事や教頭に報告する。

5 いじめに対する措置(早期対応・組織的対応)

いじめに対する措置(内容省略)
  1. (1) いじめ対応の基本的な流れ
  2. ① いじめの認知に向け、日頃からアンケート調査・個別面談等により正確な実態把握に努める。また、いじめを認知した場合、躊躇なく「いじめ防止対策委員会」(窓口は生徒指導主事)に報告し、校長のリーダーシップのもと、指導体制・方針、当該いじめにかかわる生徒に対する具体的な指導・支援等の対応、保護者との連携の在り方、今後の対応や実践についての検証方法等を決定し、組織的に事案の対応にあたる。また、校長は事実確認の結果について、責任を持って学校の設置者に報告するとともに、被害・加害生徒の保護者に連絡する。

    ② 「いじめ防止対策委員会」においては、被害に遭っている生徒やいじめを知らせてきた生徒を守りぬくことを第一としつつ、速やかにいじめの正確な事実確認を行う。なお、いじめられた生徒から、事実関係の聴取を行う際、いじめられている生徒にも責任があるという考え方はあってはならず、「あなたが悪いのではない」ことをはっきりと伝える等、いじめられた生徒の自尊感情を損なわないよう留意する。また、生徒の個人情報の取扱い等、プライバシーにも十分に留意して以後の対応を行う。

  3. (2) いじめと認知した場合の対応
  4. ① 被害生徒及びその保護者への対応

    ア いじめを認知した際の対応

     いじめを認知した際には、家庭訪問や電話連絡により、その日のうちに迅速に保護者へ事実関係を伝える。いじめられた生徒やその保護者に対し、徹底して守り通すことや秘密を守ることを伝え、できる限り不安を除去するとともに、事態の状況に応じて、複数の教職員の協力の下、当該生徒の見守りを行う等、いじめられた生徒の安全を確保する。

    イ いじめられた生徒への対応

     いじめられた生徒にとって信頼できる人(親しい友人や教職員、家族、地域の人等)と連携し、いじめられた生徒に寄り添い支える体制をつくる。いじめられた生徒が安心して学習その他の活動に取り組むことができるよう、必要に応じていじめた生徒を別室において指導する等、いじめられた生徒が落ち着いて教育を受けられる環境の確保を図る。さらに、状況に応じて、スクールカウンセラーや学校精神科医等の専門家などの、外部専門家の協力を得る。

    ② 加害生徒及びその保護者への対応

    ア いじめを認知した際の対応

     いじめたとされる生徒からも事実関係の聴取を行い、いじめがあったことが確認された場合、加害生徒に対しては、教育的配慮の下、毅然とした態度で指導する。その際、謝罪や責任を形式的に問うことに主眼を置くのではなく、社会性の向上等、生徒の人格の成長に主眼を置いた指導を行うことが大切である。また、加害生徒に対しては、複数の教職員及び必要に応じてスクールカウンセラーや学校精神科医等の専門家や警察等と連携し、事実関係を聴取したら迅速に保護者に連絡し、事実に対する保護者の理解や納得を得た上、学校と保護者が連携して以後の対応を適切に行えるよう保護者の協力を求めるとともに、保護者に対する継続的な助言を行う。

    イ いじめた生徒への対応

     いじめた生徒への指導に当たっては、いじめは人格を傷つけ、生命、身体又は財産を脅かす行為であることを理解させ、自らの行為の責任を自覚させる。なお、いじめた生徒が抱える問題など、いじめの背景にも目を向け、当該生徒の安心・安全、健全な人格の発達に配慮する。生徒の個人情報の取扱い等、プライバシーには十分に留意して以後の対応を行っていく。いじめの状況に応じて、心理的な孤立感・疎外感を与えないよう一定の教育的配慮の下、特別の指導計画による指導のほか、警察との連携による措置も含め、毅然とした対応をする。

    把握すべき情報例(内容省略)

    ③ 集団へのはたらきかけ

     いじめを傍観していた生徒に対しても、自分の問題として捉えさせる。たとえ、いじめを止めさせることはできなくても、誰かに知らせる勇気を持つよう伝える。また、観衆のようにはやしたてるなど同調していた生徒に対しては、それらの行為はいじめに加担する行為であることを理解させる。なお、ホームルーム全体で話し合うなどして、いじめは絶対に許されない行為であり、根絶しようという態度を行き渡らせるように指導する。

    ④ 継続した指導体制の確立

     いじめの解決とは、加害生徒による被害生徒に対する謝罪のみで終わるものではなく、被害生徒と加害生徒をはじめとする他の生徒との関係の修復を経て、双方の当事者や周りの者全員を含む集団が、好ましい集団活動を取り戻し、新たな活動に踏み出すことをもって判断されるべきである。このため、「いじめ防止対策委員会」において、いじめの解決に向けた指導方針や指導体制を確認し、全ての生徒が、集団の一員として、互いを尊重し、認め合う人間関係を構築できるような集団づくりに努める。

6 ネット上のいじめへの対応

(1) ネット上のいじめ

① 「ネット上のいじめ」とは、スマートフォンやパソコン等を通じて、インターネット上のウェブサイトの掲示版などに、特定の生徒の悪口や誹謗・中傷を書き込んだり、画像や動画を掲載したり、メールを送ったりするなどの方法により、いじめを行うものである。

② 「ネット上のいじめ」には、次のような特徴がある。

ア 不特定多数の者から、絶え間なく誹謗・中傷が行われ、被害が短期間で極めて深刻なものとなる。

イ インターネットの持つ匿名性から、安易に誹謗・中傷の書き込みが行われるため、生徒が簡単に被害者にも加害者にもなる。

ウ インターネット上に掲載された個人情報や画像等は、情報の加工が容易にできることから、誹謗・中傷の対象として悪用されやすい。また、インターネット上に一度流出した個人情報は、回収することが困難となるとともに、不特定多数の他者からアクセスされる危険性がある。

エ 保護者や教師などの身近な大人が、生徒のスマートフォン等の利用の状況を把握することが難しい。また、生徒の利用している掲示板などを詳細に確認することが困難なため、「ネット上のいじめ」の実態の把握が難しい。

③ このような「ネット上のいじめ」についても、他のいじめと同様に決して許されるものではなく、特徴を理解した上で、早期発見・早期対応に向けた取組を行っていく。

(2) ネット上のいじめの類型

① 「ネット上のいじめ」には様々なものがあるが、手段や内容に着目して、次のように類型化できる。実際の「ネット上のいじめ」は、これらに分類したそれぞれの要素を複合的に含んでいる場合も多くある。

ア 掲示板・ブログ・プロフでの「ネット上のいじめ」

 特定の生徒の誹謗・中傷を書き込んだり、個人情報を無断で掲載したり、特定の生徒になりすましてインターネット上で活動を行うもの。

イ メールでの「ネット上のいじめ」

 特定の子どもに、誹謗・中傷のメールを繰り返し送信したり、「チェーンメール」で悪口や誹謗・中傷の内容を送信したり、多くのクラスメイトになりすまして、誹謗・中傷などを行うもの。

ウ SNSを利用した「ネット上のいじめ」

 SNSのグループから外したり、わざと返信しなかったりするなどのやり方で、ネットワークのグループ内で「仲間はずれ」を行うもの。

  1. (1) ネット上のいじめの未然防止
  2. ① 情報モラル指導の徹底と教員の指導力の向上

    ア 情報モラル教育については学校全体で取り組み、指導に当たってはそれぞれの教員が、インターネット等に関する知識や「ネット上のいじめ」の実態を理解し、生徒への情報モラルに関する指導力の向上を図る。

    イ また、「ネット上のいじめ」は、今後、新たな手口が発生することも考えられる。そのため、常に最新の動向の把握に努める。

    ② 家庭との連携

    ア PTA総会や通友会総会等の機会を捉えて、校内における情報モラルに関する指導状況や生徒のインターネット利用状況等について家庭・地域に情報提供を行い、学校と連携して「ネット上のいじめ」の未然防止と、早期発見・早期対応に向けた情報共有や相談活動への協力を求めていく。

    イ 各家庭においても、生徒のインターネット利用状況を把握し、「ネット上のいじめ」やインターネットの利用について話題にするなど、日頃から子どもと話し合う機会を設けるようはたらきかける。また、インターネットの利用に関して家庭におけるルールづくりを行うと同時に、スマートフォンや携帯電話等にフィルタリングをかけ、使用を制限していくこと等についても啓発する。

    《情報モラル教育の具体的内容》

    ① 掲示板やメール等を用いて誹謗・中傷の書き込みを行ったり、他人の個人情報や画像等を勝手に掲載したりすることは、いじめであり、決して許される行為ではないこと。

    ② 掲示板等への書き込みなどは、匿名で行うことができるが、書き込みや画像・動画の掲載を行った個人は特定されること。特に、書き込み等が悪質な場合などは、犯罪となり、警察に検挙される場合もあること。また、掲示板等への書き込みが原因で、傷害や殺人などの重大犯罪につながる場合もあること。

    ③ 掲示板やメール等を含め、インターネットを利用する際には、利用のマナーがあり、それらをしっかりと守ることにより、インターネットのリスクを回避することにつながること。

  3. (2) 早期発見への取組み
  4. ① 「ネット上のいじめ」も、現実の人間関係が強く反映されている場合が多い。従って、現実の人間関係をしっかり把握し、いじめられた生徒が見せる小さな変化やサインを見逃さず、被害生徒の心に寄り添いながら傾聴し、きめ細かな支援を行う。

    ② 県教育委員会が実施している「ネット被害防止スクールガード事業」を活用し、インターネット上のサイト利用や書き込み等、不適切なものが報告された場合、当該生徒を指導し、削除等の対応を行う。また、必要に応じて削除依頼や警察等への通報等の対応を行う。 

    ③ SNSや携帯電話のメールを利用したいじめなどについては、より大人の目に触れにくく、発見しにくい。このため校内における情報モラル教育を進めるとともに、保護者(成人の生徒には直接)にもPTA総会・通友会総会、学校だより等で積極的に理解を求めていく。

  5. (3) 早期対応への取組み
  6. ① インターネット上の不適切な書き込みや画像・動画の掲載等については、被害の拡大を避けるため、迅速かつ徹底的に削除する措置をとる。特に名誉毀損やプライバシー侵害等があった場合、管理者やプロバイダに対して速やかに削除を求めるなど必要な措置を講じる。こうした措置をとるに当たり、必要に応じて「ネット被害防止スクールガード事業」業務委託業者の協力を求める。この対応は、生徒、保護者、教員等からの情報をもとに、「情報システム管理者」が窓口となって実施する。

    ② 生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがあるときは、直ちに当該所轄警察署に通報し、適切な援助を求める。

    《掲示板等に書き込みがあった場合の具体的対応》

    ① 書き込み内容や掲載内容の確認

    ○ 書き込みや掲載のあった掲示板のURLや不適切なメール等を控えるとともに、書き込みや掲載内容をプリントアウトするなどして、内容を保存するようにする。

    ○ 掲示板等の中には、パソコンから見ることができないものもある。その場合は、携帯電話等から掲示板等にアクセスする。また、携帯電話等での誹謗・中傷の場合は、プリントアウトが困難なため、デジタルカメラで撮影するなどして内容を保存する。

    ② 掲示板等の管理者に削除依頼

    ○ 掲示板等のトップページを表示し「管理者へのメール」や「お問い合わせ」と表示されているところから、削除依頼のメールを送信する。なお、削除依頼の方法は、それぞれの掲示板等によって異なるので、先に「利用規約」等に書かれている削除依頼方法を確認する。

    ○ 削除依頼を行う場合は、個人のメールアドレスは使わず、学校等のパソコンやメールアドレスから行う。また、削除依頼を行うメールについて、個人の所属・氏名などを記載する必要はない。掲示板等の管理者に、個人情報を悪用されることなどがないよう注意する。

    ③ 掲示板等のプロバイダに削除依頼

    ○ 掲示板等の管理者に依頼しても削除されない場合や、管理者の連絡先が不明な場合などは、プロバイダ(掲示板サービス提供会社等)へ削除依頼を行う。

    ④ 警察や山形地方法務局への相談

7 重大事態への対処

重大事態の意味とは?

① いじめにより、当該生徒の「生命、心身又は財産に重大な被害」が生じた疑いがあると認められた時

<「生命、心身又は財産に重大な被害」に該当すると想定されるケース>

  • 生徒が自殺を図った場合
  • 身体に重大な傷害を負った場合
  • 金品等に重大な被害を被った場合
  • 精神性の疾患を発症した場合 等

② いじめにより、当該生徒が「相当の期間」(年間30日を目安とするが、生徒が一定期間、連続して欠席しているような場合にはこの限りではない)学校を欠席することを余儀なくされている疑いがあると認められた時

③  生徒や保護者からいじめられて重大事態に至ったという申立てがあったときには、その時点で学校が「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とはいえない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たる。

  1. (1) 基本的な対処の構造
  2. ① 校長は、直ちに県教育委員会へ報告する。また、当該重大事態が生命、身体又は財産に重大な被害が生じた疑いがあると認めるときには、直ちに所轄警察署に通報する。

    ② 重大事態が発生した場合には、その事態に対処するとともに、速やかに組織を設け、事実関係を明確にするための調査を実施する。この調査を行う主体や調査組織については、県教育委員会において判断する。この調査を行うに当たっては、第三者の参画を得て、当該調査の公平性・中立性を確保するよう努める。

    ③ この調査によって得られた調査結果等の必要な情報は、当該生徒及びその保護者に対し、適切に提供する。

  3. (2) 重大事態の調査
  4. 「参考:重大事態発生後の対応について」(内容省略)
  5. ① 県教育委員会への報告

    学校は、重大事態が発生した場合、県教育委員会を通じて知事へ報告する。

    ② 調査の趣旨及び調査主体

    ア この調査は、民事・刑事上の責任追及やその他の争訟等への対応を直接の目的とするものではなく、重大事態に対処するとともに、同種の事態の発生の防止に資するために行う。

    イ 調査の主体は、学校が主体となって行う場合と、県教育委員会が主体となって行う場合が考えられるが、事案の特性、いじめられた生徒又は保護者の訴えなどを踏まえ、県教育委員会が判断する。

    ③ 調査を行うための組織

    ア 学校が調査の主体となる場合、県教育委員会から、情報の提供の内容・方法・時期などについて、必要な指導及び人的措置も含めた支援を得ながら、「いじめ防止対策委員会」を母体として、当該重大事態の性質に応じて適切な専門家を加えて調査を実施する。

    イ 県教育委員会が調査の主体となる場合、県教育委員会が設置する弁護士や精神科医、学識経験者、心理や福祉の専門家等の専門的知識及び経験を有する者であって、当該いじめ事案の関係者と直接の人間関係又は特別の利害関係を有しない者(第三者)により構成される組織を中心として、調査を実施する。

    ④ 事実関係を明確にするための調査の実施

    ア 重大事態に至る要因となったいじめ行為が、いつ(いつ頃から)、誰から行われ、どのような態様であったか、いじめを生んだ背景事情や生徒の人間関係にどのような問題があったか、学校・教職員がどのように対応したかなどの事実関係を、可能な限り網羅的に明確にする。この際、因果関係の特定を急がず、客観的な事実関係を速やかに調査する。

    イ いじめられた生徒からの聴き取りが可能な場合

    ⅰ いじめられた生徒から十分に聴き取るとともに、在籍生徒や教職員に対する質問紙調査や聴き取り調査を行う。この際、質問票の使用に当たり個別の事案が広く明らかになり、被害生徒の学校復帰が阻害されることのないよう配慮する等、いじめられた生徒や情報を提供してくれた生徒を守ることを最優先とした調査を実施する。

    ⅱ 調査による事実関係の確認とともに、いじめた生徒への指導を行い、いじめ行為を止めさせる。

    ⅲ いじめられた生徒に対しては、事情や心情を聴取し、その生徒の状況にあわせた継続的なケアを行い、落ち着いた学校生活復帰の支援や学習支援等をする。

    ウ いじめられた児童生徒からの聴き取りが不可能な場合

    ⅰ 生徒の入院や死亡など、いじめられた生徒からの聴き取りが不可能な場合は、当該生徒の保護者の要望・意見を十分に聴取し、迅速に当該保護者と今後の調査について協議し、調査に着手する。調査方法としては、在籍生徒や教職員に対する質問紙調査や聴き取り調査などを行う。

  6. (3) 調査結果の提供及び報告
  7. ① いじめを受けた生徒やその保護者に対して、事実関係等その他の必要な情報を提供する責任を有することを踏まえ、調査により明らかになった事実関係(いじめ行為がいつ、誰から行われ、どのような態様であったか、学校がどのように対応したか)について、いじめを受けた生徒やその保護者に対して説明する。この情報の提供に当たっては、適時・適切な方法で経過報告を行う。

    ② これらの情報の提供に当たっては、他の生徒のプライバシー保護に配慮するなど、関係者の個人情報に十分配慮し、適切に提供する。

    ③ 質問紙調査の実施により得られた結果等については、いじめられた生徒又はその保護者に提供する場合があることをあらかじめ念頭におき、調査に先立ち、その旨を調査対象となる在校生やその保護者に説明する等の措置が必要であることに留意する。

    ④ 調査結果については、県教育委員会を通じて、知事に報告する。その際、いじめを受けた生徒又はその保護者が希望する場合には、いじめを受けた生徒又はその保護者の、調査についての所見をまとめた文書の提供を受け、調査結果の報告に添えて送付する。

参考:自殺の背景調査における留意事項

生徒の自殺という事態が起こった場合の調査の在り方については、その後の自殺防止に資する観点から、自殺の背景調査を実施する。この調査においては、亡くなった生徒の尊厳を保持しつつ、その死に至った経過を検証し再発防止策を構ずることを目指し、遺族の気持ちに十分配慮しながら行う。この調査については、「児童生徒の自殺が起きたときの調査の指針」(平成23年3月児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議)を参考とする。

  • 背景調査に当たり、遺族が、当該生徒を最も身近に知り、また、背景調査について切実な心情を持つことを認識し、その要望・意見を十分に聴取するとともに、できる限りの配慮と説明を行う。
  • 在校生及びその保護者に対しても、できる限りの配慮と説明を行う。
  • 死亡した生徒が置かれていた状況として、いじめの疑いがあることを踏まえ、遺族に対して主体的に、在校生へのアンケート調査や一斉聴き取り調査を含む詳しい調査の実施を提案する。
  • 詳しい調査を行うに当たり、遺族に対して、調査の目的・目標、調査を行う組織の構成等、調査の概ねの期間や方法、入手した資料の取り扱い、遺族に対する説明の在り方や調査結果の公表に関する方針などについて、できる限り、遺族と合意の上で行う。
  • 背景調査においては、自殺が起きた後の時間の経過等に伴う制約の下で、できる限り、偏りのない資料や情報を多く収集し、それらの信頼性の吟味を含めて、客観的に、特定の資料や情報にのみ依拠することなく総合的に分析評価を行うよう努める。
  • 客観的な事実関係の調査を迅速に進めることが必要であり、それらの事実の影響についての分析評価については、専門的知識及び経験を有する者の援助を求めることが必要であることに留意する。
  • 情報発信・報道対応については、プライバシーへの配慮のうえ、正確で一貫した情報提供が必要であり、初期の段階で情報がないからといって、トラブルや不適切な対応がなかったと決めつけたり、断片的な情報で誤解を与えたりすることのないよう留意する。
  • 関係のあった生徒が深く傷つき、学校全体の生徒や保護者や地域にも不安や動揺が広がったり、時には事実に基づかない風評等が流れたりする場合もある。生徒や保護者への心のケアと落ち着いた学校生活を取り戻すための支援に努めるとともに、予断のない一貫した情報発信、個人のプライバシーへの配慮に留意する。

8 点検・評価と不断の見直し

  1. (1) 学校評価等を通しての点検・評価
  2. ① いじめの有無やその多寡のみを評価するのではなく、問題を隠さず、その実態把握や対応が促されるよう、生徒や地域の状況を十分踏まえて目標を立てる。

    ② 目標に対する具体的な取組状況や達成状況を評価し、評価結果を踏まえて改善に取り組む。

    ③ 「いじめ防止対策委員会」においては、学校基本方針の策定や見直し、いじめの取組が計画どおりに進んでいるかどうかのチェックや、いじめの対処がうまくいかなかったケースの検証、必要に応じた計画の見直しなどを行う。

9 その他

(1) 教職員が生徒と向き合い、いじめの防止等に適切に取り組んでいくことができるようにするため、一部の教職員に過重な負担がかからないように校務分掌を適正化し、組織的体制を整えるなど、校務の効率化を図る。


平成26年3月20日策定

平成30年3月20日改訂